三叉神経痛
症状
三叉神経は、左右に一対あり、それぞれ顔面の半分の感覚をつかさどっている神経です。 三叉神経痛は、この神経が刺激されることで、伝わった情報が「痛み」として認識されてしまうもので、鼻の横や、歯ぐき、目の周りなどに、激痛が起こります。 典型的には、歯みがきや洗顔、冷たい風が顔に当たるなどの刺激が引き金(「トリガー」)になって、痛みが起こります。
ときに、歯の病気と思い、歯科治療を受けられている方もおられます。 三叉神経痛の痛みは、人間が感じる痛みの中でも最も痛い痛みと言われ、治療法のない時代には、これを苦にして自殺してしまう方もいたようです(自殺病という名でも知られていました)。 幸い、現在は有効な治療法がいくつか確立されています。
ときに、歯の病気と思い、歯科治療を受けられている方もおられます。 三叉神経痛の痛みは、人間が感じる痛みの中でも最も痛い痛みと言われ、治療法のない時代には、これを苦にして自殺してしまう方もいたようです(自殺病という名でも知られていました)。 幸い、現在は有効な治療法がいくつか確立されています。
原因
三叉神経は、脳の中枢部分である脳幹から出ており、頭蓋底の骨を貫通していきます。 顔面痙攣とは違い、三叉神経はこの間のどこで刺激を受けても痛みを感じます。 典型的には、脳槽といわれる、脳の周りの髄液という水がたまっている部分で、曲がりくねった動脈が三叉神経を圧迫しておこります。
また脳腫瘍があることで、三叉神経痛が起こることもあります。 ごく稀ですが、圧迫している血管がないにもかかわらず、三叉神経に原因不明なくびれが生じていて、手術により改善した方がおります。
また脳腫瘍があることで、三叉神経痛が起こることもあります。 ごく稀ですが、圧迫している血管がないにもかかわらず、三叉神経に原因不明なくびれが生じていて、手術により改善した方がおります。
診断
基本的には症状(痛みの起こり方、起こる場所など)から診断します。 MRIを撮影することで、三叉神経に接触している血管や脳腫瘍がないかどうかを調べることができます。
治療
三叉神経痛の治療としては、4通りの治療法が行われています。
1. 薬による治療
- 顔面痙攣と同じように、三叉神経痛も三叉神経への刺激が間違って脳に伝えられることにより起こります。 そのため神経の情報の伝わり方を低下させることで、痛みを抑えます。 抗てんかん薬のなかで、カルバマゼピンという薬が三叉神経痛に対しては非常に効果が高いです。 カルバマゼピンには副作用が出る方がおり、じんましんのような薬疹が起こることがあります。
その他、肝臓の働きが悪くなったり、あるいは逆に肝臓の酵素を増やすことで他の薬の作用を弱めることがあります。 痛み止めのなかではプレガバリンという種類の鎮痛薬が有効な方もいます。 このような内服薬で有効な方でも、次第に量を増やさないとコントロールできなくなることも多く、その場合には眠気、めまい、ふらつきなどで日常生活に支障が出ることも多く経験されます。
2. 神経ブロック
- 顔から針を刺して、三叉神経のなかの神経節と呼ばれる部分に麻酔薬を注射したり、熱を加えて三叉神経をまひさせることで、痛みが伝わるのを防ぎます。 ペインクリニックで行われる治療法です。
長所は手術と比べると簡便であることです。 短所としては、時間が経つにつれて効果が薄れてくるため、半年から2年くらいの頻度で治療を繰り返す必要があることと、歯医者さんで麻酔をしたときのように、顔がしびれた感じになることですが、95%位の方で高い満足がえられるようです。
3. ガンマナイフ
- ガンマナイフはガンマ線という放射線を、虫眼鏡で紙を焼くように、ごく狭い範囲に集中させることで、この狭い範囲にエネルギーを集めて病変を「灼く」治療です。 三叉神経痛に対しては2015年に保険が通りましたが、三叉神経をガンマ線で「灼い」て、傷めることで痛みを治す治療です。
フランスのグループからの報告(2015年)では、91%の方が治療後10日以内に痛みがなくなり、治療後3年で71%、10年で45%の方が内服薬なしで痛みもない状態を維持できていた、としています。 しびれ(感覚低下)は、およそ5人に1人の割合で起こり、改善はないようです。
4. 手術
- 上記3つの治療法に比べて効果的かつ根治的な治療法であり、当院では顔面痙攣の手術同様に積極的に提案しております。 三叉神経は三叉神経に動脈や脳腫瘍が接触して起こっているため、これに対して直接操作を行って治療します。 病気の原因に対する治療になるため、根本的な治療と言え、約9割の方は、内服や通院の必要がなくなります。
典型的な、動脈が圧迫している三叉神経痛の場合には、耳の後に5cm程度の切開をおき、10円玉くらいの孔から三叉神経をのぞき込んで、当たっている動脈や静脈を移動させ、三叉神経の周りのクモ膜を切開して捻れがおこらないようにします。
欠点としては、全身麻酔が必要であり、入院治療(10日程度)が必要なこと、手術の合併症のリスクがあります。 手術で起こりうる合併症としては、同じ側の聴力低下、二重に見えるようになること、同じ側の顔のしびれ、傷の感染や髄液漏れなどが2-3%です。 また、10年間で約8%の再発の可能性があります。生命にかかわることは基本的にはありません。 当術者は、これまでに約120例の治療実績があります。
手術の概要
神経を圧迫している血管を移動し、圧迫を減らす「微小血管減圧手術」(MVD:Microvascular Decompression Surgery)を行うことで、80~90%程度の患者様は症状がほぼなくなります。